ドラちゃんの映画を観に行きました。今回は感動した、面白かったという感想もありますが、そんな単純な感想では言い表しきれないので、劇中僕が思ったことを書いていきます。最初はネタバレなしの感想、次にネタバレありの観た人向けの感想です。
【最初にネタバレなしの感想から】
この映画を一通りみて思ったのは、今までのドラえもん映画とは違う価値観や考え方に挑戦した作品だと思いました。それでいて、過去作のを観た人なら思わず泣くような演出や、台詞があったりと、従来のファンも喜ばせる作りになっていました。ひみつどうぐによる伏線が散りばめられているのも、いつもの映画ドラえもんって感じで関心させられました。
新恐竜なのでもちろん恐竜が登場するわけですが、これがすごい恐い。
主要キャラの恐竜の二匹はアニメ調でかわいいのに対し、モブの恐竜は描かれ方が妙にリアルで動きもかなり野生的です。(というか恐竜同士で戦うシーンなんかは血とか出てたし)
あと、キーキャラクターのキューとミューがとても可愛かったです。ミューのほうはくぎゅだったんですねぜんぜん分からなかったです。
ネタバレなしで言える範囲は少ないのでここまでですが、観ていない人向けに言うと、「いつも通り伏線が丁寧な映画ドラえもんだけど、話の展開はどちらかというとイレギュラーなもの」って言葉になると思います。また、少し批判めいた感想になりますが、最後辺りは、かなり賛否両論だと思います。ただ、観終えて後悔するようなものではないので、期待して観ていいと思います。
ここからは、既に観終えた人向けの感想です。ネタバレあり。
【ピー助について】
感動したポイントその1。まさか登場するとは。たしかに恐竜の映画だからおかしくもないけど、意外と盲点でした。完全に不意打ちで、もういろいろ込み上げてきて泣いてしまいました。のび太は直接会うことになったけれど、その時は溺れていて会った記憶が全くないのはとても切なかったです。でも、そこが良かったと思います。
【しずかちゃんの台詞】
感動したポイントその2。のび太がキューとケンカしたあと、湖でのび太を励ますときの台詞で泣きました。のび太は他人の悲しみを分かることができるというしずかちゃんののび太に対する評価は、完全にしずかちゃんのパパの考え方と似ています。まさかドラえもん随一の神エピソードからネタを持ってくるとは思いませんでした。
【今までにない展開】
タイムパトロールが登場したあとの流れです。従来は、悪役をのび太一行が成敗する流れですが、今回は悪役は一切出ませんでした。それどころか、のび太一行が歴史を変えてしまう悪役になりそうになる展開はハラハラしました。
ここら辺についても、広い視野で見ると、過去作のネタであると思います。というのは、今までの作品を見た人なら一度は思うことだと思うのですが、「これドラえもんたちも歴史を改変していないか?」という疑問についての挑戦に思えます。いつもは悪役が歴史を変えようとして、それでタイムパトロールに捕まるというオチですが、なぜドラえもんたちはおとがめがないのか、いつも疑問に思っていました。それが、今回はついにタイムパトロールに怒られてしまいました。
この流れは新しかったので、ここまでなら評価が高い映画だったのですが、ここから先の展開はちょっと疑問に思ってしまいました。
【のび太の行為が正当化された件について】
恐竜たちを絶滅から守ろうとするのは明らかな歴史改変になるので、タイムパトロールの手が襲うのですが、なぜかのび太の行為が許されることになります。劇中では、恐竜が鳥類へと進化する過程を守ったということで許されていましたが、ここら辺がどうもスッキリとしない。
スッキリとしない理由は、3つくらいあって、1つは劇中の理論が少し強引なこと、2つ目は、地球上の生態系の流れの重大なピースにドラえもんたちの存在が不可欠になっていること、3つ目は、けっきょくは歴史改変になっているのではないだろうかという疑問です。
3つ目の疑問については、そもそも、ジュラ紀でジオラマを落としている時点で歴史にはないものを創ってしまっているし、過去の作品でもいろいろアウトなことをやってきている気がするので、ここは気にしても仕方がないような感じもします。
恐らくここら辺の展開が賛否両論だと思います。まあ、もしのび太たちが恐竜たちを見捨てていたらそれはそれでかなりのバッドエンドだとも思いますから、仕方がないのかな。
【ところどころの矛盾や回収されていないような細かい点】
例えば、キューが飛ぶクライマックスのところは、のび太がお前は飛べないと言った直後に飛べと言った時はかなり違和感がありました。
あとは、ミューが桃太郎印のきび団子を食べたけど何も起こらない点や、キューが作中になぜかタイムパトロールからイレギュラーな扱いをされていたこと。ジャイアンとスネ夫が数回だけ見たはずのジオラマから島の正体を掴むところ。最終的にはピー助は助からない説があったり、さらに細かいところを言えば、いろいろとモヤモヤするところがありますが、さすがに粗探しの領域なのでここまでです。まあ、ピー助が助からなくても、そこまでの風呂敷を畳むのは無理かなとも思います。
ただ、全体を通して粗は多めだったところは否めません。
【悪魔の道具友チョコ】
これは出さないほうが良かった道具だと思います。これをドラえもんが使うならまだ良かったのですが、ジャイアンが使うことで、友情を大事にするキャラクターが友達と言って洗脳しているようにしか見えなくなりました。いつものジャイアンの友情と、今回の偽りの友情の描かれ方は、見ていて気持ちの良いものではなかったです。これなら桃太郎印のきび団子を使ってたほうが良かった。
簡単に言うと、ジャイアンが友達と言いながら洗脳をしていた感があるので大人しくきび団子で恐竜を支配してほしかったです。
【のび太とキューの成長】
評価点です。キューは無事飛べるようになり、のび太は最後に逆上がりができた。ここはベタですが、やっぱりいいと思いました。のび太に関しては、自分ができないことをキューにさせようとしていた序盤から、自分ができないことを押し付けないようにと、自分も努力をするという心の成長の描写がとても良かったです。
【タイムパトロールがいい味をしていた】
評価点です。一見悪役にしか見えませんでしたが、仕事を成し遂げる大人として、子どもを心配する大人として、己の価値観を大切にする大人として、中立的な立場ではありましたが、いい大人をしていました。
でも1つだけいうと、男のほうは、ジャイアンとスネ夫をいきなり催眠させたり、最後にはそれっぽいことを言って全てを持っていったりと、なんだこいつ感もありました。女性のほうは、仕事を真っ当しつつ子供達の心配もする良い大人でした。
ドラえもん、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫は物語中の心理描写が少なかった。さらにもう一匹の新恐竜ミューは、完璧なキャラクターで、悪い意味で非の打ち所がなかったです。
完全にのび太だけの物語だった点は、寂しいと思いました。
総評すると、全体的に粗があったり物語の最後では、少々強引な点があったけれど、のび太の成長物語というところではとても良い映画だと思います。今までの作品に対する挑戦的な話として作り上げられていましたが、逆にそこでモヤっとした部分ができてしまった感じです。
劇中2回も泣いてしまったので演出面は最高でした。ジュラ紀や白亜紀の世界観もかなり良かったです。
【おまけの考察】
タイムパトロールや歴史改変についての考察を少しだけ。何を考察するかというと、歴史の改変が許される範囲についてです。
よく石を蹴るだけで未来が大きく変わるといいますが、のび太に到っては本来存在しないはずの生態系を創ってしまいました。しかし、ここら辺はなんのおとがめもありません。
一方で、逆時計で時間を巻き戻そうとしたときには止めが入りました。作品は違いますが過去にはギガゾンビやキャッシュを捕らえたりしていましたが、共通点はよく分からないですね。
結論から言うと、たぶん22世紀には何かしら時間に関する法律があって、細かい点は見逃されて大幅な改変はアウトと言ったところですかね。
今までのドラえもんたちの行為は、法律上はセーフて今回はたまたま法律違反に触れたと感じなのかな。
あともう1つだけ考察があって、ドラえもんたちは特別な存在なのかもしれないという点です。今回の映画でのび太の行動が許されたのは、そうすることで従来の未来通りになるという理由でした。もしかしたら、今までもそういう意味で歴史の改変が許されていたのかもしれません。
だとしたら、ドラえもんたちは歴史の大部分を担う1つのピースということになります。ここは前述した通り、かなり違和感を覚える設定になりますが、主人公だから仕方がないのかもしれません。
この設定通りなら、鳥が飛んでいるのものび太たちのおかげだし、そもそもそこから起きる食物連鎖ものび太たちがあってのものになります。完全に月島さんのおかげ状態です。
まあ、タイムパラドックスとかそういう話は頭が混乱してくるので、ここまでにしようと思います。
以上がドラえもんのび太の新恐竜を観ての感想です。ここまでありがとうごさいました。